ああ播磨灘
さだやす圭氏作、モーニングに連載していた「ああ播磨灘」。国技であるにも拘わらず、大相撲を題材にした作品は意外に珍しいため、それだけでも注目を集めるのだが、当作品の素晴らしさはそこではない。そもそも当作品は、主人公の関取・播磨灘が横綱に昇進したところから始まる。もともと傍若無人で礼儀知らずの播磨灘が、横綱に推挙されたこと自体、「心技体」を根底とする相撲界にとって汚点だったのだが、播磨灘の仮面土俵入りに相撲界は完全に面を汚される。さらに播磨灘の「双葉山の69連勝を抜く。それまでに1敗でもしたら横綱を引退する」という暴言ともとれる振る舞いに、関取衆だけでなく力士全体を敵にしてしまう。ところが、播磨灘の快進撃は続き、本場所では3場所連続全勝優勝、そして、野外対決10連勝の55連勝を樹立。この55連勝を討ち立てるまで、作者の意図が分からなかった。なにせ播磨灘は、相撲道を熟知しているのに大相撲の根底である伝統を汚すような行為を繰り返していたからだ。ところが、播磨灘のそれまでの傍若無人な行為の意図が分かった時は感動ものだった。播磨灘は次のようなことに怒っていたのだ。今の大相撲は、伝統と言いながら、テレビ映りを気にして土俵改良したり、客入り金儲けのために室内興業に変えたり、お茶屋などに独占営業させて入場料を高くする。そもそも相撲の伝統など残ってない、と泣いたのだ。播磨灘は相撲道を歩んでいたのだった。相撲道を熟知した作品、それが「ああ播磨灘」だ。